2011/11/21 ランドセル
ダグラスレイン ビッグ・ピート
辿り着いたのは土の温かさだった。無農薬で林檎を実らせるという挑戦を始めて幾度も工夫を重ね努力しあふれんばかりの愛情を林檎の樹に注いでいるのに農薬を撒かなくなってからというもの林檎の樹はその愛情によって苦しめられているかのように衰えていき葉を落とし花も咲かず実も付けなくなった。
林檎農家なのに林檎が実らない。
男は苦しみ尽きたと思った。そして男のロマンに、この苦しみにこれ以上愛する林檎を家族を付き合わせる訳にはいかない。
―――自ら命を絶とう
そう思った男は山に入っていき自分の死に場所を探した。満月の夜だった。山へ入ってどれくらいだっただろう。ふらふらとその場所を探していた時に月明かりに照らされる一本の樹に目が止まる。
―――林檎の樹だ
決して太くない幹なのにその枝からは力強く背筋をピンと伸ばした強い生命力を感じさせる葉がたくさん月明かりを反射させ強い光を放っているようにさえ見えた。その樹のまわりには何も遠慮することなく雑草が生え茂り額縁が絵を引き立てる様にその樹を引き立ていた。思わず男はその樹に近づいていった。いや農家としての男のロマンが心よりも体を動かしたのかも知れない。そして導かれるように土の温かさに気が付く。
―――そうだったのか。
男はその場所を探し当てたのだ。一年後に二つ花が咲き2つ林檎が実った。一つは神棚へ一つは家族で分けあって食べた。さらに一年後、隣の林檎農家から驚嘆の声で「お宅の林檎がすごい事になっている!!。」と言ってきてくれたので慌てて農園に行くと、そこには林檎農園にあふれんばかりの白い林檎の花が力強くその生命を咲かせていた。
無農薬を志してから九年がたっていた。カマドケシ。東北で役に立たない男に浴びせられる皮肉である。九年間、釜戸消しと呼ばれ続けた男が成し遂げた奇跡の瞬間だ。そしてこれが奇跡の林檎と言われる林檎の誕生だ。死に場所を求めて辿り着いたあの場所の樹はブナの樹だったというのはロマンが成せる男のご愛嬌。
ロンサカパ センテナリオ 23
まだ少女だった頃よく川へ水を汲みに行くお手伝いをしていた。その川の水は何の殺菌消毒もする事もなく飲料水として使用できた。むしろ家族の生活を支える命の水であった。その川でオタマジャクシの卵からかえるのを見て驚き感動し日々の卵の変化を見るのが楽しみになっていた。命を支える美しい川。無数の流れ星が川を写す夜、空から星が落ちてくるようで恐くなって眠れなくなったその少女に「ケニヤ山には大きなバッファローがたくさん住んでいて大きな角で空を支えてくれるから大丈夫よ。」と母は優しく語ると少女は安心して眠った。
無数の流れ星を写した命の川は今はもうない。商業的農業という考え方が入ってきてからだろうかトウモロコシと小麦粉を作る為に土地を開墾しアフリカ原産の作物を別の作物にに替えていった。開墾方法も北半球のやり方で日照量の多い南半球の方法はとられる事はなかった。元々アメリカ大陸で発見されたトウモロコシを取り入れた為に現実はアフリカの気候には適さない現代的な食物を採用したことがアフリカの穀物の不作の原因の一つとなる。さらに森林を伐採し外来種の森林農園に替えてしまった事で土地はやせてしまった。そこへ雨がやってくると土壌のすべてを削り取り海へ流してしまう。
―――土地の砂漠化
少女は二十歳の頃アメリカに留学する機会に恵まれアフリカ女性で初めて博士号を修得する。ケニアに戻ってきた少女に待っていたのはジュンダー問題といわれる女性別視社会だった。性別には関係なく講師として受け入れてもらうこと。「それはもう大変な戦いでした。」その戦いが終わりかけた頃1975年第一回国連女性会議出席の議題準備で出逢った農村部の女性達の訴え。砂漠化によりきれいな飲み水がなく栄養のある食物も十分でない。殆んどが薪を使っていた為エネルギーもなく貧困にあえぎ収入がなかった。「この女性達の為に自分には何が出来るのか?。」それは自我を超越した真の人間となる体験であり本当に生きる事と生きる事の真の目的を体験することであり、人の役に立つということです。そして彼女はその女性と一本一本、木の苗を植え始める。
グリーンベルト運動
自軍の兵士達にも呼びかける。砂漠化という敵は雨が降るとやってきて土壌をすべて削り取り海へ流してしまうのです。この砂漠化という敵に奪われている土地の面積が隣国に奪い取られているとしたら、政府は我が国が戦争状態にあると宣言するでしょう。しかし敵は内部から侵略しているのです。私が兵士なら片手に銃を持ち、もう一方の手で木の苗を持っていき、そして、どこへ行っても銃をおろして木の苗を植えると思います。日本の国土の68%は森林である。が、ケニアでは私は国民に向って森林を10%に近づけなければならない。戦争や紛争は全て限りある資源を奪い合うことから生まれます。地球上の人々が資源を上手に分け合うことを学べばこうした悲劇は起きません。エネルギーを節約し使い捨てせず、使い終ったら資源をリサイクルする社会を作ることであり、低い価値しか与えられなかった森林や文化の価値を再評価することです。
3つのR。リデュース、リュース、リサイクル。
カルヴァドス・コックレル XO
2011/3/11
ランドセル 石垣りん
あなたは小さい肩に はじめて
何か、を背負う 机に向ってひらく教科書
それは級友全部と同じ持ちもの
なかには 同じことが書かれているけど
読み上げる声の千差万別
入学のその翌日から ほんの少しづつ
あなたのランドセルの重みは 違ってくるのだ。
手を貸すことの出来ない その重み
かわいい一年生よ。
―――この春は何度泥にまみれたランドセルに胸を詰まらせればいいのか。
世界に“もったいない”と提唱してくれたワンガリー・マータイさん。どんな人でも我が身の置かれる状況を全てコントロールできるとしたらそれは、物事が自分に不利になったときにどう対処するか、という点だ。失敗はいつも私に与えられた。その度「自分の力で立ち上がり進み続けよ。」という課題なのだととらえられてきた。環境分野、アフリカ女性として初めてンーベル平和賞を受賞したマータイさん。3つの言葉を忘れないで欲しい。完全にコミットメント(参加)すること。それから忍耐力。そして辛抱強く前進するということ。あきらめたら終りです。
東日本大震災。
被災者の皆様。心よりお見舞いと哀悼の誠を捧げます。
“モッタイナイ”キャンペーンの他にマータイさんは「アンバウド(へこたれない)」精神の大切さを訴えてきた。一人のアフリカ人女性によってモッタイナイと気付かされ、アンバウドと教えられた。
―――我々は明日、どう生きようか。
「お待たせ致しました。」
「いらっしゃいませ。」